大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成7年(ワ)5479号 判決

主文

一  被告は、原告に対し、金二九九二万二五五三円及びこれに対する平成元年一〇月二六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを二分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

理由

【事実及び理由】

第一  原告の請求

被告は、原告に対し、金六八七〇万円及びこれに対する平成元年一〇月二六日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、建物を店舗として賃借していた原告が、被告の右建物建替計画に応じ、新築後のビルの一部分をあらためて賃借することを前提としていったん賃借建物を明け渡したところ、その後、被告が右新築ビルのうち原告が賃借する予定であった部分を第三者に賃貸してしまったため、これによって原告の賃借を不能ならしめたとして、被告の債務不履行を理由として、損害賠償を請求したという事案である。

一  争いのない事実など

1 原告は、昭和四八年九月一日、小滝栄太郎から、別紙物件目録一記載の建物(以下「旧建物」という)を賃料月額金一五万円(ただし、昭和六三年当時は月額金二二万五〇〇〇円)、敷金五〇〇万円との約定によって賃借し、その引渡を受けた。

2 原告は、旧建物を店舗として、「国際ラジオ」との屋号にて、電気部品販売業を営んでいた。

3 小滝栄太郎の長男小滝達郎(以下「達郎」という)は、栄太郎の行ってきた不動産賃貸業を引き継ぎ、昭和六二年一一月には自ら代表取締役となって右不動産賃貸業を目的とする被告(有限会社バウハウス)を設立した。

4 達郎らは、旧建物の敷地を含めた土地上に新しくビルを建築の上、被告においてこれを原告を含む第三者に対して貸室として賃貸することを計画し、原告と被告は、昭和六三年三月七日、以下の内容の合意をした(以下これらの合意を「本件合意」という)。

(1) 被告は、平成元年五月末日までに新しいビルを建築する。

(2) 原告は、被告に対し、昭和六三年五月一〇日限り旧建物を明け渡す。

(3) 被告は、原告に対し、右明渡後から前記ビル新築までの間、月額金一八〇万円の割合による休業補償金を支払う。

(4) 被告は、原告に対し、新築にかかるビルのうち、一、二階の中の各一六・五平方メートル部分(以下これを「原告賃借予定部分」という)を次の約定にて賃貸するものとする。

期間 平成元年六月一日から三年間

賃料 月額金二七万五〇〇〇円

保証金 金一七五〇万円

5 原告は、被告に対し、昭和六三年五月九日、旧建物を明け渡した。

6 被告は、同年八月頃から、ビルの新築工事に着手し、平成元年八月末頃、別紙物件目録二記載のビル(以下「本件ビル」という)が完成した。

7 しかるに、被告は、同年一〇月七日、訴外株式会社クラウン無線(以下「訴外会社」という)に対し、本件ビルの一、二階全部を賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、同月二六日にはこれらの引渡を終えた。

8 その結果、原告は、右同日以降、原告賃借予定部分を賃借して営業を再開することができなくなった。

二  争点

1 被告による本件合意の不履行

(原告の主張)

被告は、本件合意に基づき、平成元年六月一日には原告に対して原告賃借予定部分を引き渡すべき債務を負っていたところ、本件ビルの完成を遅延させた後、原告との間で賃貸条件について交渉中、前記のとおり、訴外会社に対して一方的に原告賃借予定部分を賃貸して引き渡したため、右債務の履行を不能にした。

(被告の反論)

原告の右主張は争う。

なお、本件合意中の本件ビル完成後の賃貸借に関する部分は、その当時、本件ビルの設計図ができ上がっておらず、原告及び訴外会社に対する貸室として予定されていた一、二階部分の様式や区画等が特定されていなかったため、あくまで予約として合意されたものにすぎず、原告主張の賃料及び保証金の金額等も、その後の協議による再調整を予定していたものであった。

2 本件合意の解除の当否

(被告の主張)

被告は、本件ビルの躯体工事等が完成した平成元年七月初旬頃以降、原告に対し、前記予約に基づいて賃貸条件決定のための交渉に入ったが、原告が被告の提案した原告賃借予定部分に関する間仕切りの仕方に難色を示し、建築資材高騰に伴うビル建築費の増大という事情変更により、採算上賃料及び保証金を値上げしたいとする被告の提案に対しても反対したばかりか、本件ビルの完成遅延に伴う前記休業補償金の追加支払を求めるなどしたことから交渉が進展せず、そのため内装工事の着手に遅れを来した。

そこで、被告は、同年九月八日、原告に対し、賃貸条件として、賃料を月額金三三万七一五〇円、管理費を月額金五万一五〇〇円及び保証金を金三一三一万四〇〇〇円とすること、原告に対する貸室の間仕切りを前記提案のとおりとすること及び原告においては前記休業補償金の追加支払の要求を撤回することを申し入れるとともに、これに対する返答を同月一六日までに行うことを求め、右期限までに原・被告双方が以上の点について合意できない場合には、前記予約を解除する旨通告したところ(以下右内容の解除通告を「本件通告」という)、原告は右期限までに何らの返答もしなかった。

したがって、前記予約は、同月一六日の経過をもって解除されたものであるから、被告がその後に原告賃借予定部分を訴外会社に対して賃貸したからといって、原告との関係で何ら債務不履行となるものではない。

(原告の反論)

被告の右主張はすべて争う。

原告は、被告から本件通告を受けたことはない。

被告の主張によれば、被告主張の期限内に原・被告間で妥協案がまとまらなければ、原告は本件ビル内に賃借する部分を得られなくなり、旧建物において行っていた営業を再開できなくなるという結果になるが、新装開店の広告を出すなどして新店舗での営業再開を熱望し、被告との間の本件合意に関する交渉についても寺井一弘弁護士に委任するなどしていた原告が軽々に被告のそのような内容の本件通告を了承するはずがない。

そもそも、被告が平成元年一〇月二七日に原告を相手方として前記予約解消を求めて申し立てた調停申立書においては、解除に基づく予約の解消は主張されておらず、単に、事情変更を理由として予約の解消を求めたいとの主張がなされているにすぎないことからすると、本件通告が原告に対して実際になされたとは考えられない。

そして、本件通告の内容は全く一方的なものであり、そのような通告から解除権が発生することはない。

3 原告の損害額の算定

(原告の主張)

原告は、被告による本件合意の不履行により、以下のとおりの損害を被った。

(1) 借家権の喪失

原告は、原告賃借予定部分を賃借できなかったことにより、平成元年一〇月二六日時点における右借家権価格金六〇〇〇万円の損害を被った。

(2) 得べかりし営業利益の喪失

原告は、原告賃借予定部分において営業を再開できなかった結果、平成元年一〇月二六日から平成八年三月三一日までの間において、年間金五四一万七三六二円の割合によって、合計金三四八四万九二二〇円の純利益を得られなかった。

(3) 引渡遅延による営業利益の喪失

原告は、当初の約定引渡日である平成元年六月一日から右引渡が履行不能となった日の前日の同年一〇月二五日までの間において、少なくとも月額金一八〇万円の割合によって、合計八七〇万円の営業利益を失った。

(被告の認否)

原告の右主張はすべて争う。

第三  当裁判所の判断

一  本件合意の内容について

1 前記「争いのない事実など」において判示した事実関係に基づくと、被告は、原告に対し、本件合意により、旧建物の明渡を受けた上、一定期限までに本件ビルを完成させ、予め定めた賃貸条件を前提として、同ビルのうちの一部分をあらためて賃貸することを約したものと認めることができる。

そして、《証拠略》によると、たしかに、被告の原告に対する本件ビル完成後の賃貸借に関する合意は、「貸室賃貸借予約契約書」と題する書面によってなされているものの、同書面には詳細な賃貸条件が記載されている上、被告と訴外会社が原告に対して差し入れた「念書」においては、「被告と訴外会社は、本件ビル完成後、被告が原告に対して原告賃借予定部分を賃貸することを合意している」旨が明記されており、また、旧建物の明渡に関する「明渡契約書」においても、「原告は本件ビル完成後貸室賃貸借予約契約に基づいてこれに再入居するものとする」旨が明記されていることが認められる。

これらの事実によると、本件合意中の本件ビル完成後の賃貸借に関する部分は、前記予約との文言にかかわらず、被告が原告に対して本件ビルの一部分を賃貸することが既に明確に合意されていたものと認めるのが相当であり、その性質としては、本件ビルの完成を停止条件とする賃貸借契約であるとみるのが相当である(なお、本件ビルの完成によって、右条件が成就したことは前記判示のとおりである。)。

2 この点について、被告は、右賃貸借に関する合意の部分は、賃貸借の予約にすぎないと主張する。

しかし、被告の右主張は、前記1の判示に反するものであって、直ちに採用できないものであるが、仮に被告主張のとおりであるとしてみても、右賃貸借の予約は、特段の合意がない以上、原・被告双方が本契約締結のための予約完結権を有するものと解されるところ、《証拠略》によると、原・被告双方とも、本件ビル完成間近の平成元年七月頃以降、本契約締結のための交渉を開始し、賃貸条件を煮詰める作業に入ったことが認められ、右事実によれば、原・被告双方とも予約完結権を行使したものということができる。

したがって、被告の右主張によっても、賃貸借の予約は完結されて本契約の成立に至ったものといわなければならない。

二  本件合意の解除の当否について

1 被告は、原告との間の賃貸条件に関する交渉が進展せず、本件ビルの内装工事の着手に遅れを来すようになったため、平成元年九月八日、原告に対して前記内容のとおりの本件通告を行ったが、同月一六日までに返答がなく、合意ができなかったので、本件合意(被告の主張では前記予約ということになる。以下同じ)は解除された旨主張する。

2 そこで、検討するに、被告の右解除の主張は、前記のとおり、賃料及び保証金等の金額と原告賃借予定部分の間仕切りをいずれも被告の提案どおりとすること及び原告から出されていた休業補償金の追加支払の要求を撤回することを内容とする被告の申入れに対し、原告が八日後までに返答をなし、以上の点について合意ができなければ本件合意を解除するという本件通告の存在を前提とするものである。

《証拠略》によれば、本件通告は、被告代表者が、平成元年九月四日頃に原告の代理人寺井弁護士からの「要望書」を受け取った後、同月八日、原告を被告の事務所に呼び寄せて、メモ(乙二号証)を手渡した上で行われたものであり、原告もこれを了承したとされている。

しかしながら、原告本人はそのような事実を否定する旨の供述をしているし、また、《証拠略》によると、原告は、平成元年七月頃以降、被告から提案された賃料及び保証金の値上げや原告賃借予定部分の間仕切りの仕方等に納得せず、しかも本件ビルの完成が遅延したため、その遅延分の休業補償金の追加支払を求めており、これらを自己の代理人である寺井弁護士を通じて被告側に申し入れていたこと、また、乙二号証の記載によると、本件合意の内容とは異なり、被告は、賃料及び保証金の金額のみならず、契約期間を二年とすること及び更新時における保証金の一割償却を新たに提案していることが認められる。

右事実とこれまでに判示した事実関係によると、原告が、被告主張の日時に被告代表者と面談したとしても、被告代表者から、八日間の期限内に、被告の提案を承諾する旨を返答するか、あるいは前記の点について被告との間で別途合意を成立させるかしなければ、原告においては本件ビル内に賃借部分を得られなくなり、営業再開が頓挫する結果になることを承知した上で、被告代表者の本件通告をいわば最後通牒としてそのまま受け入れて帰ったものとは直ちには考え難く、寺井弁護士との相談をしないままに、右八日間が経過すれば本件合意が当然に解除されることになるという通告をそのまま了承したというのは不自然であるといわざるを得ない。

この点は、原告が指摘するとおり、被告が同年一〇月二七日に本件合意の解消を求めて申し立てた調停の申立書においては、本件通告とこれに基づく解除の主張が全くなされていないことからみても、右のように解さざるを得ないものである。

それゆえ、被告主張のような内容どおりの本件通告が実際に行われ、原告がこれを了承したとする被告代表者の前記供述はそのままでは採用し難いといわなければならない。

3 のみならず、前記事実関係によると、原告が被告の前記提案に納得せず、さらには被告に対して休業補償金の追加支払を求めたとしても、そのような問題の調整と解決は、本件合意の内容をその後の事情の変更に応じてどこまで修正するかという事柄であるため、当事者双方の妥協と歩み寄りを必要とするものであるから、原告において右のような態度を直ちに改めなかったからといって、それだけで原告に債務不履行があるとすることはできず、それゆえ、被告において、原告に対し、期限を切って一方的に通告(催告)を行い、原告がこれに従わなければ、そのことを理由として本件合意を解除できるというような法律関係にはなかったものといわなければならない。

したがって、被告の前記解除の主張は、解除原因の点においてもまた理由がないというべきである。

三  被告の債務不履行責任について

前記一及び二において判示したところからすると、被告は、本件合意に基づき、原告に対し、原告賃借予定部分を賃貸して引き渡すべき債務を負っていたにもかかわらず、その完成を遅延させた後、平成元年一〇月二六日に訴外会社に対してこれを引き渡した結果、これによって、原告に対する右債務の履行を不能にしたというべきである。したがって、被告は、右債務不履行に基づき、原告の被った後記損害を賠償すべき責任を免れないものである。

四  原告の損害額の算定について

1 これまでに判示した事実関係によると、原告は、従前旧建物について借家権を有していたところ、旧建物を本件ビルに建て替えたいとする被告の計画のため、旧建物から退去してこれをいったん明け渡し、本件ビル内の原告賃借予定部分を賃借して再入居するという予定でいたものである。

したがって、原告としては、被告による本件合意の不履行さえなければ、右の予定どおり、旧建物に代えて原告賃借予定部分について借家権を取得することができたものということができるから、原告の損害額の算定に当たっては、右借家権を取得できなかったことによって生じた損害が被告の右債務不履行と相当因果関係のある損害と認めるべきである。

そこで、以下、原告主張の損害について、順次検討する。

2 借家権の喪失

《証拠略》によると、平成元年一〇月二六日時点における原告賃借予定部分の借家権価格は金一三八〇万円であったと認められ、原告は、被告の前記債務不履行によりこれと同額の損害を被ったものというべきである。

3 得べかりし営業利益の喪失

(一) 《証拠略》によると、原告は、昭和六二年当時、東京都千代田区内のいわゆる秋葉原の電気商店街内において、旧建物のほか「ニューセンター店」及び「ラジオデパート店」の合計三店舗を有し、これらで電気部品販売業を営んでおり、同年三月頃からは名古屋市内でも新しく店舗を開いたこと、昭和六二年の総勘定元帳の記載によれば、同年における全店舗の現金売上高は、旧建物分が金三五一五万九六八六円、ニューセンター店分が金二八四三万一五〇〇円、ラジオデパート店分が金五三一万八〇六〇円及び名古屋店分が金三九四万八八一五円であり、その総合計額が金七二八五万八〇六一円であること、全店舗の振込による売上高合計金五六二万二八〇三円を、各店舗の右現金売上高に応じて按分すると、旧建物分の振込による売上高は金二七一万三四四〇円(円未満切捨て。以下同じ)となり、その結果、旧建物分の売上総額は金三七八七万三一二六円となること、一方、売上原価及び経費については、その大半が店舗毎による記帳がなされていないところ、全店舗の売上原価が三八九七万六八八五円、地代家賃を除いた経費が金二二八四万一〇一五円(駐車場使用料を含む。なお、原告の右主張額には減価償却費の脱漏による違算がみられる)となり、各店舗の売上総額に応じて按分すると、旧建物分の売上原価が金一八八〇万九三八一円、地代家賃を除いた経費が金一一〇二万二五六七円となり、これらに旧建物分の家賃金二七〇万円(月額金二二万五〇〇〇円)を加えると、その総額は金三二五三万一九四八円となること、したがって、同年における旧建物分の純利益は、以上を差し引くと金五三四万一一七八円となること、もっとも、本件合意においては、新賃料が月額金二七万五〇〇〇円とされていたため、旧建物に代えて原告賃借予定部分を賃借した場合には、右家賃としてさらに年間金六〇万円が必要となるため、右純利益は金四七四万一一七八円となることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によると、原告は、昭和六二年当時、旧建物における営業によって年間金四七四万一一七八円(月額金三九万五〇九八円)の純利益を上げていたものであるから、原告が平成元年一〇月二六日以降原告賃借予定部分を賃借して営業を再開できなかったことによる営業利益喪失の損害については、右金額に基づいて算定するのが相当である。

(二) 次に、原告は、右営業利益喪失の期間について、右同日から本件口頭弁論終結後の平成八年三月三一日までの期間(約六年五か月)を主張する。

しかしながら、原・被告間の本件合意においては、本件ビル完成後の原告賃借予定部分についての新しい賃貸借では期間が三年間とされていたことは前記判示のとおりである。

たしかに、前記貸室賃貸借予約契約書においては、期間満了時における契約の合意更新についての規定が置かれてはいるものの、本件のように、原告賃借予定部分についての借家権を取得できなかったことによる営業利益喪失による損害額の算定というような場面においては、その損害算定の期間について更新を前提として長期の期間によることは必ずしも相当とはいえず、控え目な算定方法を採用するのが相当であるというべきである。

したがって、前記純利益額に基づいて三年間分の得べかりし営業利益の額を計算すると、金一四二二万三五三四円となる。

4 引渡遅延に基づく営業利益の喪失

原告は、原告賃借予定部分の約定引渡日である平成元年六月一日から同年一〇月二五日までの間、月額金一八〇万円の割合によって合計金八七〇万円の営業利益を失ったと主張するところ、本件合意においては、賃貸期間が同年六月一日からとされていたことは前記判示のとおりであるから、被告は、右時点から、被告が同年一〇月二六日に訴外会社に対して原告賃借予定部分を賃貸して引き渡したことによって原告に対する右債務の履行が不能となるまでの間において、右債務の履行を遅滞したものといわざるを得ない。

そして、前記3で判示したところからすると、原告は、右期間中、被告から原告賃借予定部分の引渡を受けて営業を再開していれば、月額金三九万五〇九八円程度の利益を上げ得たものと推認できるから、これに基づいて、原告主張の右期間中の得べかりし営業利益を算定すると、合計金一八九万九〇一九円(同年一〇月分は日割計算)となる。

なお、原告は、右の算定に当たり、前記休業補償金と同額の月額金一八〇万円の割合によるべきことを主張するが、前記判示にかかる約定の休業補償期間を超えて、右金額によるべきことを肯認させるに足りる具体的な立証はないから、右主張は採用できない。

5 以上によると、原告の損害額は合計金二九九二万二五五三円となる。

五  そうすると、原告の被告に対する本訴請求は、金二九九二万二五五三円及びこれに対する平成元年一〇月二六日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 安浪亮介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例